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Short Storys

第6章 それぞれの道(Dグレ/ラビ)



10体近くのアクマの死体。

それはちょうど今倒されたようで、哀れなアクマたちは次々に消滅していく。

そしてその真ん中で、アクマの魂を見送るように空を仰ぐ少女の姿。

咄嗟に身構えたラビの斜め後ろにいるファインダーを、ラビは手で制す。

すると、ラビ達の存在に気づいたのか、ふと少女がこちらを見、その藍色の瞳に二人は捕らえられた。

瞬間、ラビが何か悪いものを見たかのように目を見開いた。


「……!?」

「待ちくたびれたわよ、ディック。」


少女が、微かに笑みを浮かべて彼の名を口ずさむ。

ディック。

それは、ラビの前の記録地での名前。
名前を捨て、ブックマンとして旅に出た彼の48番目の名だ。


「本当に………、か…?」

「やだな、当たり前でしょ?」


もう会うことはないと。
そう思っていたのに。

記録地での交流はうわべだけ。
ブックマンたるもの、そんなことは常識だ。

黒の教団に来るため、いつもと同じように名を変えて、48番目の記録地のことも、容易に忘れたと思っていたのに。

まさか一目見ただけで思い出せるなんて。

彼女は、前の記録地だった村にいた普通の少女―。

…ディックが惚れ込んでいた少女だった。

最も、その想いを意識した暁には彼はブックマンではいられない。
意識しないように、目を背けていた想いだった。


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