第9章 婚約者は誰?
~ご親戚の話。
着物を着て玄関に到着すると、使用人たちはもう既に横並びに客間まで列をなしている。お母様も遠い遠い列の先端の方だ。
あたしは……「そこにいて」と奥様に制された。ここまでくるともうさほど驚かないけど、分家の方にどう思われるのかと少し怖い。今回は時間がぎりぎりになったわけでもないのに、あたしは再び悟くんの横に並んで立つ。
別に立ったからと言って何というわけでもないんだけど、はとこの楓様はそんなあたしが気に入らない様子だったし、みんなあたしの事が嫌いだって言う。
だから今回も極力目立たないようにしたかった。けど着物は悟くんとお揃い仕立てだし、並びは隣だし、もはや恐怖しかない。
「前も言ったけど夕凪は堂々としてればいいから。今は術師としてちゃんと独り立ちしてるんだし」
「う、ん」
萎縮してるあたしに気付いたのか悟くんが声をかけてくれた。時々こうやって頼りになる事言ってくれる。和服姿だと余計にかっこいいなぁと眺めてしまう。あたしがそんな顔して悟くんのこと見てたの見られたのかな?
「随分と大人っぽくなったね」
太くて低い声が聞こえた。まだ出迎えの挨拶は始まっていない。多分おトイレを借りに屋敷に入った傍ら悟くんに声をかけたんだろう。あたしは声をかけられることなんかない。お顔を確認する前に反射的に黙って俯いた。先程の質問に対して悟くんの返答が聞こえない。
「いくつだっけ?」
悟くんに肘でつつかれてあたしは頭を上げる。見ると悟くんの前に立つお客様があたしの方を向いてらしゃる。え? まさかあたしに話しかけてるの? この方は……当主の弟にあたる方、悟くんの叔父様だ。緊張しすぎて声が出ない。
「18ですよ。学年でいうと僕のひとつ下」
悟くんが代わりに答えてくれた。
「そうか。こうやって悟くんの隣に立ってると五条の人間かと思うね。はっはっは」
――な、なんてことを! とんでもないことを仰った。
何も言葉を発することが出来ず再び視線を下に落とす。とても直視なんかできない。恐ろしい。