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【R18】You belong with me 【赤井秀一】

第1章 出逢ってしまったふたり


赤井side


「…もうこんな時間か」


どうも仕事をしていると時間が経つのを忘れてしまう。
そういえば、あいつはまだ本を読んでいるのだろうか。

そう思って、書斎のドアを開けると
椅子が背を向けた状態で、誰も見当たらない。


「腹が減って、ダイニングにでもいるのか」


そうつぶやいて、書斎を出ようとしたとき


「はんにんは…あなた…ふにゃ」


と、背を向けた椅子の方から声が聞こえた。

まさか…と思い、椅子に近寄り、
くるっと回転させてこちらを向かせると、
椅子にすっぽりと身体を収めるように体育座りをして
本を抱きしめながら眠っているサラがいた。

寝言を言いながら、すやすやと眠るその少しあどけない寝顔と、まさか黒の組織と繋がるスパイ組織にいた女スパイとは思えないほど、気の抜けた寝言に
俺は思わず 吹き出した。


「ふっ…」


自分でも、あまり笑わない方だと自覚しているが
予想外にツボに入ったらしい。

まだこのまま観察していたい気もするが、
そろそろ夕飯の買い出しに行きたいところだ。


「サラ」

「ふぇっ!?」

沖矢昴の声で、耳元にそう囁くと
サラはビクッと身体を震わせ、丸い目をしてこちらを見た。


「あか…沖矢さん!あれ?もしかしてわたし寝てた…?」

「ええ。ぐっっすりと」

「本読んでたら眠くなっちゃって」

「では、眠気覚ましに買い物にでも行きましょう」


そう言って車の鍵をクルクルと回し部屋を出ようとしたが、
ぽかーんとそれを見るサラを見て、はあっとため息をつきながら言った。


「一緒に行きましょう」

「わたしも一緒に行っていいの…?」

「一応、同居しているわけですし。」

「嬉しい!誰かとスーパーで買い物するの、夢だったの!」


目を輝かせながらそう言って笑う彼女を見て、
数年前に見た彼女と同一人物に思えないほどだった。
女スパイとして対峙した時は、
素早い身のこなしに、挑発的な眼差し
何より正確なエイム力で相手を戦闘不能にするハンドガンの腕前
どことなく、人を寄せ付けない恐ろしさすら感じる女だった。
その女が、平凡なクロワッサンの朝食に喜び、
一緒にスーパーに行くと言うだけではしゃいでいる。

変な女だ。
だが、少し興味が湧いてきた。

そう思いながら、車へと乗り込んだ。

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