第1章 出逢ってしまったふたり

朝食を食べ終えると、沖矢さんは立ち上がりながら言った。


「さ、では僕は夕方まで部屋で仕事をしますので。」

「あっそう。じゃあわたしは、気晴らしに散歩でも行こうかな」

「駄目です」

「で…すよね。でも、暇なんだもん。」

「それなら、こちらへ。」


そう言われてついて行くと、
部屋の壁が本棚になっている圧巻の部屋へ通された。


「なにこれ…すごい…本がいっぱい！」

「これだけ本があれば、退屈じゃなくなるでしょう。夕方まで部屋に籠る予定なのでそれまで大人しくしていてください。」

「じゃあ、それまでここで本でも読んでます。」


しぶしぶ、部屋の真ん中にある社長室の椅子よりふかふかの椅子に腰掛けて、
その辺にある本をひとつ手に取った。


「くれぐれも、逃げ出そうなどと考えないように」

「わかってますー！」


部屋を出る沖矢さんをしっしと見送って、
わたしはその辺にあった本を手に取った。

わたし、あまり本とか読まないんだよね。
あまりに乗り気になれないまましぶしぶ本を読み進めてた。


久しぶりに読んだ活字はわたしの眠気を誘うには十分で、わたしは気づいたら意識を手放していた。