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月夜の欠片

第15章 理由


「朱莉、こっちにおいで」

カタカタと小刻みに体を震わせ涙を堪える朱莉に腕を広げて呼ぶと、それに抗うことなく朱莉は杏寿郎の腕の中におさまった。

「の寿命は俺と出会った時には既に失わされていた。治癒能力は生きる上で必要不可欠な栄養を糧として発動させる。は幼少期にその能力目当ての輩に拐かされ、その屋敷で10年以上十分な食事を与えられぬまま治癒を日々強制させられていたんだ」

もう10歳になるのに父の腕の中に何の抵抗もなくおさまるあどけない少女の体は依然として震えており、もう瞬きを1度でもすれば頬を伝うほど瞳には涙が溜まっている。
そんな朱莉の背中をゆっくり撫でながら、杏寿郎はの願いを続けた。

「その事実ははもちろん、元柱である者たちの全員が知るところだ。その全員に対してのの願いは、変わらず笑っていてほしい……というもの。自身も今を笑顔で過ごすことで、楽しい思い出をたくさん作りたいと言っている」

その願いを受け入れた杏寿郎はの前で絶対に悲しい表情を見せていない。
朱莉が見る2人は本当に幸せそうで、悲しいことなんかないのではと感じるほどに笑顔で溢れているからだ。
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