第15章 理由
自傷的な笑みを浮かべた後、杏寿郎は朱莉と向かい合って居住まいを正し、成長するごとに益々と瓜二つになってきた朱莉の顔を笑顔で見つめて頭を撫でた。
「この父が不甲斐ないばかりに不安にさせてしまっていたのだな。すまない。そしてその理由を今話すことは可能だが、君が感じ取っている通り楽しいものではない。むしろお母さんが大好きな朱莉にとって辛い内容だが……それでも聞くか?」
まるで稽古をしている時のような厳しくも真剣な表情に怯みそうになるが、何年も聞くか迷って漸く決心が着いたのだ。
例え辛い内容であっても大好きな父親の悲しみを1人背負わせたくない一心で、朱莉も真剣な表情で見つめ返し頷いた。
「聞きたい。力にはなれなくても、お父さん1人に悲しい想いを背負って欲しくないから」
「君はお母さんに似てこうと決めれば譲らないな!分かった。では単刀直入に言う。お母さんは…… は治癒能力によって本来持って生まれていた寿命を8年失わされている」
前後の話を聞かなくてもそれだけの言葉で杏寿郎の悲しい表情の理由が分かった。
そしてその現実は朱莉の胸に激しく鋭い痛みをもたらす。
「そんな……8年って……それはお兄ちゃんたちを助けたからじゃないよね?そんな事、お父さんやお兄ちゃんがたち良しとするはずないもん……」