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月夜の欠片

第12章 好きなもの


能楽観賞から喫茶店での一時を経て、2人は休みの最後の時間を縁側で寄り添って過ごしていた。

「あの、杏寿郎君。赤ちゃんの名前、朱色の朱(あか)に茉莉花茶の莉(り)で朱莉ちゃん……はいかがでしょうか?店員さんから茉莉花は白く甘い香りのする可憐なお花だと伺いました。花言葉も清浄無垢と素敵な花言葉なので」

湯呑みを両手で握り締め自分を見上げるの瞳はキラキラと輝いており、思わぬところで素敵な花言葉を持つ花を知れたこと、そしてそれを名前に入れたい!と雄弁に語る表情だ。

そんなに穏やかな笑みを浮かべ、杏寿郎は肩を抱き寄せて頭を撫でた。

「それ以外に考えつかないほどにいい名前だ。この子の名前は今日から朱莉……毎日呼び掛けてやろう!父上や千寿郎、君のご両親にもお伝えせねばならないな!」

1度体を離すと、二人の視界の端に綺麗な黒いものが飛び立つ姿と夜空へ羽を羽ばたかせる音が入ってきた。

「要、神久夜!さっそく伝えに行ってくれるのか?」

「ウム!カグヤトトモニツタエニイク!フタリハヤスンデイロ!」

「行ってマイリマス!」

相変わらず相方思いの鎹鴉たちは仲良く隣同士、まるで杏寿郎とのように寄り添って夜闇に姿を消していく。

何でも共に長い時間過ごすうちに仲良くなり、目出度く鴉界で結ばれ他の鎹鴉たちに祝ってもらったらしい。
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