第8章 第26章 月と太陽(1874～1878ページ)

「悪かった……お前の泣き顔は堪えんだァ……泣き止んでくれ」

胸の中にすっぽりをおさめている杏寿郎もの頭を撫でる実弥も、その表情は先ほどとうって変わって悲しげに眉をひそませている。

その様子をハラハラなんてものはとっくの昔にどこかへ置き忘れた門下生たちがドキドキと見つめ、この後の展開を期待しているようだ。

「……ダメです。お庭を元にしてくださるまで謝罪のお言葉は受け取るだけにしました。私は皆さんのお茶とお菓子を用意しているので、ちゃんと戻して下さい」

珍しく怒っているのか……は杏寿郎の腕の中からスッと離れて涙をゴシゴシ手で拭いながら玄関へと1人歩を進めてしまった。

当然2人は呆然としている。

「よもやよもやだ……不死川、が怒ってしまったぞ！あの子に怒られたのは初めてだ！ふむ、罪悪感はあるがやはり怒っていても愛らしいな！茶と菓子を用意して待っててくれるなど優しさに溢れている！」

「てめぇなァ……アイツ聞いたらもっと怒っちまうぞ。いやまぁ、言ってることは分かるが」

お茶とお菓子を用意するなど言うから、2人は反省しつつもあまり堪えていない。
どちらかと言うと初めてに怒られた2人はしょげかえるどころか、笑顔を浮かべて今は姿の見えないの指示を全うするために荒れた庭の片付けに邁進していった。