第1章 本編
そこから一旦言葉を切る彼に合わせて黙る。緩く開かれていた手を握ったり開いたりと落ち着かないようだったが、小さく息を吐き出した彼が二人の間のテーブルに手をのせる。手のひらを上向きにし、緩く開いた。
「俺の気持ちはあの時から変わっていない。この先の人生、に側にいてほしい。考えたくはねぇが、NOなら今後一切アプローチはしないと約束する。だがこの手を取ってくれるのなら、その後は死んでも離してやれねぇから覚悟して返事しろ」
ぽかん…、と気持ちに効果音をつけるならこれだ。この男は告白すっ飛ばしてプロポーズしているのに気付いているのか。いや頭が良いのだから気付いているよね。
そして愛の告白が最後は脅迫になってきているのはわざと?強すぎる言葉の数々にめまいがする。
だって、それだけ想いが強いんでしょ?
規格外な男だとは思っていたが、こんなときまでそうだとは。
「貴方の愛を受け止めるのには苦労しそうね」
彷徨わせていた瞳を合わせ、笑う。
僅かに見開く彼の瞳は重ねられた手に向く。視線が向いたのに合わせてぎゅっと握ってあげた。
「私も、あなたが好きっ…」
「っ」
「うっ…」
最後まで言わないうちに体格差のある男に強く引き寄せられ、腰かけていた椅子から落ちそうになりながら彼に抱き止められる。キツイ程の腕の力に、この細身のどこにこんな力があるのかと場違いなことを考えながらもその背に手を回した。
「いいんだな、俺で」
「ええ。貴方こそ私で良いの?年上よ?」
「関係ねぇ。それでいったら俺は年下だぞ」
「年下に思えない言動だけど……確かに関係ない」
肩に顔を埋めるように抱きつく男にポンポンと頭をなで、離れてこちらを見る男に正面から微笑んだ。
「これからよろしくね、ロー」
end.