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好きになってしまった人には、忘れられない人がいる

第1章 1. 私


気づいたら、いつしか大人になってた。


忙しくも楽しく過ごした学生時代

荒波に揉まれ初めて挫折というものを味わった社会人の今


それなりの人生を送ってきた。



「彼氏と別れた」



切なく、でもどこか受け入れている表情で笑う友人の優子。

2年間という決して短くはない関係に終止符を打ったのは彼女の方。

それでも泣いたのはその彼女の方。

どんな大恋愛でも、どんなにお互いが想い合っていても、必ずしも結ばれるとは限らない。

障害、壁、試練

時と場合によって、自分達だけの気持ちではどうにもならないことがある。



「暫くは一人でいいかな」



今まで彼氏が途絶えなかった彼女が、もう半年程フリーなのだそう。

彼女が彼と幸せになるための努力をしていたことは知っていたし、それでも解決しない問題に悩んでいたことも知っていた。

別れようかな、と何度も口にするも、それが本心でないことは勿論分かっていた。



辛い思いをしているということ、単純にそれだけは分かる。

でも、それがどんなに辛いものなのか、ということは分からなかった。

それは私に、その経験がないから。



「そっか…私も彼と結婚するか迷ってる」
「何で?1年以上付き合ってるのに?」
「ん〜彼年下だし…結婚するなら頼れる年上がいいなって」



久しぶりに再会した学生時代の友人達は、彼氏がいたり、別れたり、新しい出逢いを追い求めたり。

みんなが当たり前かのように話す中、私は相槌を打って聞くだけ。
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