第1章 逃げられない
「えっと…。君、大丈夫?あまり、了さんに酷い事されるようなら…」
「モモ。それは大きなお世話という物かもしれないよ。彼女もあいつと似たタイプの人間なのかもしれない」
それは心外だった。脅されてこんな事をさせられているというのに、そんな男と同類にされたのは不愉快だった。
「貴方も思った事を口にする、了さんと同じようなタイプに見えますけどね」
あくまでもにこやかに、でも、口から出た言葉はもう取り返す事が出来ない。心配してくれていた百も唖然としている。
「へぇ…。あいつと同じく見られるのはイヤ、か…。まぁ、それも演技なのかどうかはこれから見させてもらうよ。君、名前は?」
「」
「ツクモ所属?」
「デビュー前なのかな?オレもちょっと聞いた事無いなー。ああ!デビューしてたんならゴメン!それはオレの情報の漏れであってさんがどうこうっていうワケでも悪いワケでもないから!」
いや、デビュー前です大丈夫です。慌てる百にそう教えると、目に見えるように安堵している。百を見ていると自然と優しい気持ちになっていく。
だけど、私に必要なのは冷たい心。この優しい人をツクモに引きずり込んで、Re:valeをツクモの物にする為の冷酷さ。でも、この準備期間ずっと悩んでもいた。
自分可愛さに他人を巻き込んでいいのかって。風俗落ちくらい自分が我慢すれば済む話なんだって。でも、色々想像すると怖くなって考えるのをやめて…。ズルズルとここまで来てしまった。
「さん?」
心配そうな百に顔を覗き込まれてはっと我に返る。すぐにマキさんと特訓した笑みを浮かべた。
「ふふ。ごめんなさい。ちょっと考え事してしまっていたの」
もう後には戻れない。痛む胸は気づかないフリをした。