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月虹の恋人たち(Re:vale夢)

第1章 逃げられない


 
 
 会員制の高級なクラブの前で、了さんと車を降りる。来た事がないような世界に飲み込まれ、キョロキョロと周りを見回すと、「田舎者丸出しの恥ずかしい行動はやめてくれ」と了さんから鋭く叱責されてしまった。
 促されて了さんの左腕に軽く右手を差し入れると、その状態で店の中へ連れていかれた。
 
 先に来ていたのはRe:valeの二人だった。百が私たちに気付くと大きく手を振っていた。私と目が合うとにっこりと微笑まれる。すごく人懐こい、人好きのされる人だと思った。
 対して、千は腕を組んで不機嫌さを隠しもしないで了さんを睨んでいる。…この人を落とすとか無理難題すぎませんか?
 
「やぁ、お揃いで。元気そうだねぇ」
「病院に入ってない時点で元気といえるだろうね。気分は最悪だけど」
「もう、ユキ!了さん、久しぶり!そっちの子は了さんの彼女さんかな?」
 
 三人の男の中で二人がズケズケと物を言うタイプのようだ。救いは百しかいない。心は全体重を百に預けても良い。
 
「違うよー?まぁ、ひと言で言えば僕のおもちゃ」
 
 感情を顔に出さない術は覚えた。だけど、身体は正直で膝の上でギュッと拳を握ってしまう。
 
「了さん、女の子相手におもちゃっていう表現は……」
 
 さすがに百も了に眉をひそめる。
 
「今一二番を争うくらい気に入ってるんだ」
「へぇ」
 
 千さんが私を初めて興味を持ったように見た。
 
「珍しく、壊さないように大切にメンテナンスして使ってるんだよ」
 
 私をプレゼンする了さんの口角が上がっている。千が明らかに興味を持ったのが嬉しいのだろう。
 
「そう。大事にしすぎてまだ処女でね。それを味わうのが楽しみで仕方ないんだよ」
「了さんが下ネタ!?珍しい!」
 
 千の視線は明らかに捕食者のそれだ。了さんには一切興味を示さず、私だけを見ている。
 打ち合わせ通りの時間に、了さんの携帯が着信を知らせる。
 
「おっと。ちょっと席を外すよ」
 
 了さんが店を出て行く。これも手筈通りだ。
 慣れない環境に一人になった私を百が心配して世話をやいてくれる。私は演技抜きで、その百の優しさに救われていた。
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