一緒に灯台の光を灯し続けよう(アイナナ大神万理夢)
第3章 行方不明の女子力
「ご迷惑をおかけして大変申し訳ございませんでした!」
大神さんのベッドの上で頭を深く下げる。土下座だ。もう少しでお昼という時間まで私は眠りこけてしまった。
「全然謝ることじゃないよ。頭を上げて。枕が変わって眠れなかったんでしょ?俺の腕じゃ硬すぎただろうし」
昨日着ていた皺の出来た服を身につけ、一晩中大神さんの腕を枕にしてしまった事に対してシーツに額をめり込ませる。
「それに……さんには無理させちゃったし」
きっちりと服を着込んだ大神さんの言葉に勢いよく顔をあげる。そう、裸だった理由を知りたいのだ。私たちは下の下着だけは身につけていたのだ。という事は、最後まで致していない可能性が高まる。上は裸だったし、胸と肩など多少密着はしてしまっていたのだが…。
「そのぅ…。大変申し訳ないのですが…記憶が…」
「ないの?」
「……すみません……」
私の言葉に大神さんがふむ、と腕を組んだ。そして、私のすぐ隣に腰をかけて、長い脚をゆったりと組んだ。そのまま、じっと見つめられると、好きな人に見つめられる恥ずかしさと同時に自分がメイクしたまま寝てしまった事実に思い当たって両手で顔を隠した。
「どうしたの?」
「め、メイクが…あの、見ないでください…」
「ああ。さんの寝顔、ずっと見てたから今更そんな事気にしなくても大丈夫だよ」
「見て…!?」
両手を離して大神さんに絶望に染まった顔を見せると、「ぷっくくく」と口元をおさえて、大神さんが肩を揺らして笑いだした。
「そ、そんなに気になるならシャワー貸してあげるよ」
「お借りします!」
勢いで洗面所まで行ってしまって引き返す。替えの下着もなければ、大神さんが全裸で使用してる浴室を使用させてもらうのも、同じ香りを纏うのも、風呂上がりにバスタオルを借りるのもキャパオーバーだった。
「あの……顔だけ洗えれば……」
「そっか。お風呂上がりに俺のシャツ着て欲しかったんだけど、残念だな」
「死ぬ……!」
大神さんはお腹を抱えて笑い続けた。