• テキストサイズ

マヨネーズから油を抜いたらどうなりますか(土方夢)

第1章 仮の居場所



 ソファータイプの座席に並んで座る野郎二人は、店内の客より外の人々の方に目に付くようで、パーラーの窓越しに女性達がこちらを指をさして耳打ちしている姿をよく見かける。
 
「が食ったら出るぞ」
「あ、はい」
 
 あんなにみちみちとしていたカップは若干のマヨネーズの痕跡を残しているが綺麗になっている。
 慌てて、はスプーンを動かして最後の溶けたクリームを口の中に入れた。
 そんなの動作を横目に、土方が腰を上げ、同時にスっと入れ物に収まっている伝票を掴んでいく。
 
「あ、副ちょ「先に行く」
 
 土方よりも奥に座っていたは尻を滑らせるように移動し座席を立つ。慌てて土方を追うも、追いついた時には金銭をトレーに置いているところだった。
 店員に見送られ、財布を取り出しながら土方の後に続いて外に出る。
 
「副長、支払いさせてしまってすみません」
 
 小銭部分を開けるを、土方が肩越しに振り返る。
 
「財布出すの面倒だからいらねェ。それより、勝手に市中見回りって言っちまったが、用事があるんならそっち行って構わねェよ」
「いえ。休日を貰っても何もする事がなくて…本当に困っていたんです」
 
 無表情が常なの眉が少し下がっている。心底困った様子のに土方がフッと笑む。

「んじゃ、見回る前に一服させてくれ」
「どうぞ。私はタバコは吸わないんで待ってます」
 
 設置された街角の喫煙スペースに吸い込まれていく土方の後ろ姿を見送り、は邪魔にならないスペースに移動する。
 休日ではあるが、土方と市中見回りをするという事もあり、自然と往来に警備の目を向ける。
 その中、流行の装いの若い女性たちが楽しそうに話しをしながら目の前を通り過ぎた。通り過ぎた時に香る香水もきっと流行りの物なのだろう。
 女性たちが入って行った店の入口をぼんやり見つめているのすぐ隣にタバコ臭い男が並び、土方の戻りを知る。
 
「気になる人物でもいたか?」
 
 この男はいつからを見ていたのか。誤魔化す必要も無いとはひとつため息を吐いて土方に向き合った。
 
「いえ。自分には無縁の女性たちだと思っていただけです」
「……羨ましいか?」

/ 8ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp