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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第16章 覚醒のトリガー


ぎゅっと鷲掴むボスの頭髪。肩に触れてるスーツの生地は血でベタついている。
次のフェーズは内臓か、どうしてくれようか。
そんな私の肩にぱん、と強めの力で手が乗せられて見下ろしてるであろう悟を見上げた。

「もう止めな、ハルカ。充分だろ。これ以上自分の手を汚しちゃ駄目」

引いてるのかな、ってちょっとだけビクつきながら見上げた顔は、目元こそ見えないけれど緩く弧を描いてた。声色も優しくて逆に今は私のこれからって気持ちを薄れさせていく。
ああ、せっかくのやる気が悟のその優しさで消えてくじゃない。全て無くなる前に実行に移さなきゃ…。

『……汚れてるよ、充分に』

構成員を助けきれず、祖母も死なせてる。
ふたり殺したようなもの。そのふたり共、このリベルタのボスのせいだった。原因であるボスはここで始末しないといけない。殺しだけじゃない、なんども私は苦しめられた。
憎くて憎くてたまらない。身体がこんなにも動かないのにその感情だけが行動を突き進めてた。

『捕まってたからって話じゃない、とっくに人殺しに加担してるもん……私。なら、せめてこいつだけはそのまま殺したって良いじゃん』

見上げた悟は少し屈んだから視線は下がる。私達の周辺はうめき声や、走り回ってる足音、手当てを叫ぶ声、拘束を呼びかけてる声。戦闘音は聞こえないからなんとかなったみたいだけれど。

指でアイマスクを下げた悟は少しだけ悲しそうな表情をした。

「僕だってね、オマエに酷くしたやつらを全員殺してやりたいさ。助けたあの日だって傑に止められたよ。
気持ちは分かる、でもこういった呪詛師は然るべき措置をするんだ。僕達は何もここに攻め込んで殺せって命令を受けてるわけじゃない。
ハルカ、呪術師は基本呪いを祓うもんだろ?」

『……うん』

「ハルカが今やってる事は呪いを祓ってるわけじゃないよね?僕はキミにこれ以上悲しい思い出を作って欲しくないなあ」
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