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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第16章 覚醒のトリガー


145.

ずぷっ、と赤い切れ目が首に現れ、その切れ目から血が首下へと溢れてはすぐさま治癒をする。体の内側、喉の中で零れた血をゴボリと咳き込んでその真っ赤な血を吐き出すボス。

なぁんだ、こんなやつでも血は赤いのか。非術師だろうが呪術師だろうが同じ人間を簡単に殺してるのに血は赤いんだ?
不思議なことに構成員や祖母に死んで欲しくないって必死だったはずなのにボスにはそんな感情なんて沸かなかった。むしろ、死んで欲しいとさえ思ってる。もっともっと苦しんで痛みに歪み、絶望した表情を見せてから死ねば良いって。

『フェーズ、2…』

フェーズ2、フェーズ3…。
斬られては治されるという死と再生の3度目を終えた。痛みや血で咳き込むせいもあってどんどん抵抗する力も弱まってる。
これで4度目の死を。憎い気持ちが加虐心に染まっていくのを感じた。それは生まれて初めての気持ちだった。
母や家族からの強い希望で呪術師としてではなく、非術師としての生を望まれた私。普通に生きてた。イジメなどに加担してない、喧嘩もしてない、なんの闇を抱える事なく平凡に生きていて、こんな事をするのは私にとっての初体験だった。
加虐性を自分の中に感じながらもデメリットがそんな事してる場合かってしゃがみ込む体に警告してる。ガンガンとした頭痛はサイレンみたいに激しく思考を邪魔するかのように。

『……フェーズ4』

プシッ、また鮮血とうめき声と喉に溢れた血液を口から吐き出すボス。

「が、は…っ」

『平手打ちって……ああ、この状態じゃあ叩けないか、じゃあ一度外してさ……くっつけてみる?エヘクトルって人の、最期みたいにさぁ…脈打つ様に動脈から血が一気に吹き出すけれど。それで死なないでよ?』

「がっごぼ、ごふ」
『まあとりあえずは一度治すよ……っ。
ふーっ、まだ私、これだけじゃない実験されてた、から……つぎ、は…ええと、臓器の各パーツを、3回ずつ取り除くやつだっけ?その実験をしたいんだけれど、』

目が霞む。なのに暴走が止まらない。急な坂道で走り出したが如く自身で止まる術が分からなくなっていた。もう少し、あともう少しなら耐えられる。ここで死ぬ為にやってるんじゃないし。耐えて、あとはじっくり休めば治るはずだから。
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