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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第8章 スキルアップ


61.

朝が来た、という具合で目を覚ます。
隣にしがみつくコアラが居ない、という事は悟はキッチンにでも言ってるのかと頭によぎるも天井が違う。
上半身を起こして周囲を確認するも自室ではなくて私はフリーズした。真っ白じゃないから病院ではないし……ここどこよ?
香りがなんとも清潔感があり、僅かに消毒液の残り香がある。するってーと……
首の後ろをポリポリと掻いて服装が制服のままであるという事に気が付いた。

カッカッカッ…
足音がこの部屋に近付いている。こういった音は男物じゃない。部屋の前で音は止まり、そのままドアが開けられた。
そこには家入がいて寝起きの私と視線が合った。

『おはようございます…?』
「おそようの間違いだな、もう10時だし」

ふっ、と柔らかく笑った家入はドアを閉めて再び靴を鳴らしてベッドの側へとやってきた。
10時。とっくに授業に入っとるではないか。
再びの硬直。このベッドに眠りにつくまでの記憶の曖昧さに私はゆっくりと両手で顔を覆った。

『あの……かなり記憶が吹っ飛んでて何がなんだか…』
「最後の記憶は何が残ってる?」
『最後の記憶……というと…──』

昨日(私にとってはさっきくらいの感覚)アガリビト(仮)の件でひたすらに精神汚染と拘束時に負わせた怪我の治療を繰り返していた。
始めは伏黒、釘崎、虎杖で。
正気に戻った人を伊地知がバスに連れていき、ピストン式にバスが繰り返し行方不明者だった人達を運んで行った。

虎杖と釘崎が精神汚染…アガリビト化の原因を作った呪霊を直接叩きに行ったのだけれど…この辺は疲労で記憶が朧げで。呪霊は確かに居た、らしい。これは私は直接見ていない、虎杖に聞いた話だった。直接叩いて祓っても精神汚染は解かれず、どうやら被害者の中に移植された呪力がある内は精神汚染されたままであるという事で、残念ながら戻ったふたりを含めてしばらく治療に当たっていた。

アガリビト化した人間のやってくる頻度がかなり減り、私は何か口走ったような気がする。何か食べたいとか、そんな感じに食事したいなー、くらいに。この時はもう寝惚けてるというかほとんど意識がトんでたのかもしれない。
そして空白があり、今起きたというワケで。

ぽつりぽつりと話していくと家入はフフッ、と肩を少し震わせて笑った。
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