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【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第11章 昨日と明日と明後日と




・・・ただ、今は。
今だけは、彼の言葉を信じてみようと思えた。

「・・・分かりました」

まだ、完全に気を許せてはいないけど。
少し本性を見せたこのタイミングなら、何かが前進するのではないかと思えたから。

「準備、してくるので・・・少し時間をください」
「待ってます」

部屋が隣だったのは、幸か不幸か。
とりあえず足早に自室に部屋戻ると、扉に鍵をかけ、深く長い溜め息を吐いた。

「・・・・・・」

赤井さんになんて言おう。
いや、言う必要があるだろうか。

・・・一瞬、言わなくてもいい理由を考えてはみたが。
言わなければならない理由は見つかっても、その逆は見つけられなかった。

気が重い中、着替えや入浴を手早く済ますと、再び隣の部屋へと向かい、ドアの前で立ち止まった。

ドアノブに手を掛けたのはいいものの、こんなにも重い扉だっただろうかと、中々それを開くことができず。

数回深呼吸を繰り返してから意を決すると、ゆっくりドアを開いた。

「お邪魔しま・・・」

ドアの隙間から覗き込むように顔を覗かせると、彼は気配で感じ取っていたのか、玄関前で私を待っていて。

おずおずと入ってくる私に笑顔を向けると。

「おかえりなさい」

そう、言ってみせた。
まるでここが元々私の帰ってくる場所かのように。

その言葉にむず痒さを感じながらドアを閉めると、返答する言葉を頭の中で並べ考えてみたけど。

「た、ただいま・・・?」

それ以外の答えがない。
ただそれが正しいとも思えないせいで、疑問符をつけながらそう返事をした。

「はい、おかえりなさい」

彼なりにはそれが正解だったようで、満足そうな笑みに変わると、部屋の奥へと誘導された。



 
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