インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第2章 新入生歓迎レース!
「それではこれから箱根学園自転車競技部一年歓迎走行会を執り行う!」
主将、福富が宣言した。
準備の整った1年生たちは
「よろしくお願いしますッ!!」
と湧き立った。
「コースはこの西駐車場からスタートして郊外をぐるっと回り、また戻ってくるまでの約70キロメートル」
福富が説明するのを2年、3年生も聞いていた。
「この学校は山の上にあるから、全体として前半はくだりで後半に登ることになる。
ペース配分を間違えると最後の登りはきついぞ。
各々自分のペースをつかんで、しかし誰より先にゴールする、という気概で走れ」
「ハイッ!!」
「スタート!!」
福富が高らかに叫ぶと同時に1年生たちは走り出した。
「全員行ったな……
ではオレたちも追いかけるとしよう」
3年レギュラー陣は伴走車に乗り込むと1年生の後を追った。
1年生は1年生なりに必死に頑張って走ってはいたが、皆五十歩百歩といったところで、レースが中盤にさしかかっても、突出した選手は見受けられなかった。
「あの真波とかいうの、後方に埋もれちまってるぜ」
荒北が言うと、東堂は
「ふむ……」
とうなづいたが、新開は
「勝負は最後まで解らない…………だろ?」
にっこり笑ってウインクした。
残り10キロメートルで1年生たちは混乱に陥れられることになった。
「なっ……なんだよ あの加速は…………!」
「速い!しかも くっ、余裕の表れかよ?!…………笑ってやがる!!」
「オレたちなんか相手にもならないってことか…………」
瞳孔を見開き、笑いながら一気に坂を駆け登り、他を抜き去った少年がそこにはいた。
「やっぱ楽しい!この学校に入ってよかった!!
オレ……生きてる!!」
1年走行会の結果は、土壇場で逆転を果たした真波がぶっちぎりの1位であった。
「皆、ご苦労であった。
今日の結果を踏まえて、今後のメニューは組まれていくこととなる。
明日からもハードだぞ。
では解散!!」
「あざっした!!」
福富が締めくくり、一年走行会は終了した。