第35章 幼魚と逆罰
夢の途中、まだその続きが知りたくて、眠りに縋っていたら。
「綾瀬さん」
その声がやけに近くで聞こえたから、ゆっくり目を開けた。
目を開けて、すぐそばで海色の瞳と視線が交差する。
「……っ!?」
ふかふかのマットレスの上、寝ぼけた私を七海さんが肩をすくめて見下ろしていた。慌てて私は身体を起こす。
「お、おはようございます」
「おはようございます、綾瀬さん。寝起きで申し訳ありませんが、急いで支度を」
すでに髪を整えて仕事着を着た七海さんが、私にそう命じる。
たしか昨晩の段階では任務の予定などなかったはず。
緊急任務が入ったのか、あるいは早朝から筋トレをさせるつもりなのか。
急ぐことを忘れて考えている私に、七海さんがもう一度声をかけた。
「任務ですので早く」
「え? あっ、はい!」
慌ててベッドから降りて洗面所に向かう。
適当に顔をパシャパシャと洗って、歯ブラシを手に取った。
同時並行で、ヘアブラシを使って髪を梳いて。
洗面所から出て寝室に戻る。
ハンガーに掛けている制服を手に取った。
「はほほふんへほはひはふ!(※あと5分で終わります!)」
「そんなに慌てなくていいです。歯磨き終わってから喋ってください」
脱衣所に行ってパジャマを脱ぎ、スカートとニーハイソックスを履く。この時期にどう考えても暑すぎる格好だけど、制服がこれなのだから仕方ない。
学ランを適当に羽織って、また洗面所に戻り、うがいをする。
時計を見たらちょうど5分。