第33章 ※反魂人形④
どんなふうに旅館まで帰ってきたか、もう思い出せない。
「五条先生……」
広いベッドの上、私は五条先生の膝の上に乗っている。
さっきまで五条先生と家族風呂に入って温泉に浸かっていたはずなんだけど。
温泉が心地よかったって記憶さえも、曖昧なの。
昨日とは打って変わって、温泉に浸かっている間、五条先生が全然私の身体に触ってくれないことがもどかしくて。
互いに温泉を満喫できるはずの空間だったのに、私は全然落ち着くことができなかった。
「皆実」
そんな私を見透かしたように、温泉から部屋へ戻ると、五条先生が私をベッドに導いてくれた。
「ダメじゃん。せっかくの温泉なのに全然安らげてなかったでしょ」
裸の五条先生がそばにいて、安らげるわけない。
でもそんな文句を口にする時間すら、惜しくて。
「……ぅ…ん」
私は五条先生と口付けを重ねていた。
角度を変えて、何度も。昨日お預けされた分と、これから訪れる『五条先生と会えない時間』の分。
私の身体の中を、五条先生の呪力で満たしたくて。
舌を絡めたのは私の方。
「……かわいいよ……皆実」
甘い言葉に刺激されて、私の呪力が溢れかえる。
毒に等しい私の呪いを受け止めて、五条先生は尚も優しく私の頭を撫でてくれた。
「キスの先……始めてもいい?」
待ち侘びてる言葉に、頷いて返す。
そうしたら、五条先生がキスをしたまま私の胸へと手を下ろした。
五条先生の手が浴衣の上から私の胸に触れて、五条先生が小さなため息を吐く。
「……なんでブラつけてないの?」