第30章 反魂人形
「私が……入りたいんです」
耳を疑うようなセリフを、恥ずかしげもなく皆実は口にする。
おそらく、しっかり寝ぼけてる。
「五条先生と、温泉……楽しみにしてたんです」
そう口にして、皆実が僕にキスをする。
本当、いつからこんなに積極的になったんだろうか。
きっとこれも、僕への罪悪感がさせてるんだろう。
「皆実」
皆実が僕に縋っているだけだと分かっていながら、僕はその言葉に抗わない。
でもこれは、皆実が僕に流した呪いのせいなんかじゃない。
「……のぼせても、知らないからな」
僕は皆実を抱きかかえたまま、行く先を変える。
期待するような皆実の顔を見たら、ずっと僕のそばに置いておきたいと、心の底から思ってしまう。
七海に頼んだことも全部、帳消しにしたくなる。
でもそうしないのは、それだけ皆実を大事に思うからだ。
この感情も全部、皆実の言う通り『呪い』に翻弄された結果なのだとしたら、それは皆実が僕にかけた『呪い』じゃない。
「……余計に疲れさせちゃったら、ごめんね」
僕が望んで、僕自身にかけた『呪い』なんだ。