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【呪術廻戦】無下限恋愛

第29章 情⑤


 気づけば、薄暗い部屋の中に陽の光が差し込んでいた。


「……ぅ……ん」


 意識を取り戻す度に繰り返した五条先生とのキスも。

 朝日が昇ってしまえば、もう終わりのタイミング。


「皆実……悠仁がそろそろ起きるよ」


 私のことを見下ろして、五条先生が優しく言ってくれる。

 その顔はほんの少しだけ、疲れてるように見えた。


 でもそれも当然なの。


 私が意識を手放しても、五条先生は眠らずに私のことを見守ってくれていて。

 私が目を覚ます度に、私が満足するまで抱きしめてくれたから。


 疲れさせたのは私なの。


 私のせいで、一睡もできなかったはずなのに。


「……まだ……足りない?」


 足りることなんて、ありえないんだよ。

 でもこれ以上、私を甘やかしちゃダメだよ。


「……もう……タイムリミット…ですよね」


 五条先生に触れるだけのキスをして、私は五条先生の体を解放した。


 首に巻きつけていた腕を解いて、五条先生から目を逸らす。

 見つめていたら、どうしても求めてしまうから。

 その瞳を見ることなく、私は目を閉じた。


 そんなどうしようもない私の頭を、五条先生はあやすように撫でてくれる。


「……水、とってくるね」


 本当は、私がしなきゃいけないことなのに。

 五条先生がベッドを軋ませて、立ち上がる。

 サイドテーブルに置いていたスマホに手を伸ばして。

 そのスマホを弄りながら、五条先生は静かに部屋を出ていった。


「……五条先生」


 ベッドの上、起き上がって座り込む。

 五条先生の出て行った扉に、背を向けて。


 私以外誰もいなくなった部屋の中は、とても静かで、とても寂しい。

 布団を手繰り寄せれば愛しい香りが鼻腔いっぱいに広がった。


「……私、もう変になっちゃってるよ」


 呟いた言葉が部屋に木霊して、ひとりぼっちの私に返ってくる。


 変なの。

 五条先生が少し離れただけで、不安なの。

 呪って、依存して、五条先生の香りを抱いてないと、苦しいの。

 壊れた感情が、五条先生を求めることをやめてくれない。


 でもそれも全部、私が望んだ結果だった。
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