第27章 情③
こんなときに限って、五条先生は欲しい言葉だけをくれる。
「僕を呪えるもんなら、呪ってみろ。そしたら僕がそれ以上に皆実を呪ってやるよ。それで皆実が僕にかけた呪いも全部精算できるだろ」
できないよ。
だって、どうしたって私が五条先生を呪う気持ちのほうが大きいんだから。
分かりきったことなのに。
でも信じたくなっちゃうんだよ。
叶わない夢を、願っちゃうの。
「皆実が願うなら何回でも壊してやるよ。忘れさせてほしいって言うなら……僕が全部忘れさせてやるから」
五条先生の温かい手が、私の頰に触れる。
「だからもう、他の男に抱かれるな」
その願いを、叶えることができないと、分かっていても。
どうしたって、誓わずには、いられなくて。
「……皆実」
ダメだと分かっていて、私はもう、五条先生のキスを拒まなかった。
だってやっぱり……。
触れる唇が、愛しくて、たまらないんだよ。
こんなのもう、どうしようもできないんだよ。
「……五条、先生」
五条先生を呪うって分かってても、止められなくて。
「……ごめん、ね」
悲しく響いた声は、五条先生を呪う熱に消えて、なくなってしまったの。