第27章 情③
《……そのまま……俺にすべて差し出せ》
私のことを抱きしめて、耳に唇を寄せる。
宿儺の唇が私の耳を幾度となく、しゃぶった。
「ん……ぅ……っ」
《オマエはどこを舐めても……いい声を出す》
「も……う、や……めて」
《『もう?』 笑わせるでない。俺はまだオマエを全然味わえていないぞ?》
クスクスと、鼓膜を刺激する笑い声が不快なのに。
身体はバカみたいに疼いた。
《オマエのナカに……小僧の熱を埋めて……オマエの心も全部……俺だけのものにしてやる》
それを望んでるわけじゃないのに。
期待するように、身体がどんどん熱を帯びていく。
《……皆実》
宿儺の唇が私の唇を塞いで、その味を教えこませるように舌を絡めた。
「ん……ぅ、……んんっ…」
宿儺のキスに、無抵抗に応えることしかできなくて。
裏切りを重ねる音が部屋中に木霊する。
「……ん、ぁ」
けれど、残酷な現実は、もうすぐぞばまで押し寄せていて。
私と宿儺の交わりを、暴くように。
蓋が開くような、小さな音が……微かに、けれども確かに、鳴り響いた。
「……っ、ぅ」
その小さな音ともに、その気配が、濃くなるのを感じる。
(う……そ)
すぐそこに、その気配が存在していることを、私の身体を廻る呪力が教えてくれた。
「待って……っ、や、だ……離して」
離れてほしいのに、宿儺は私のことを離すどころかきつく抱きしめてきて。
《……まだまだ味わえていないと、言ったはずだぞ?》
言ったよ。でも。
これ以上はもう、本当に……だめなんだよ。
「お願い……おねがいだから、……っ」
《そう何度も願いが叶うほど、甘い世の中ではない》
そんなの嫌になるくらい分かってるよ。
分かってるけど、でも。
それだけは……絶対。
(いや……だったんだよ)
背後で、階段の軋む音がした。
「……何してんの」
大好きな、その声を、今だけは聞きたくなかったんだよ。
「皆実」