第25章 情
《①まずあの男がいる時に身体を乗っ取るのは得策でない、ということ、②あの男が不在であってもヤツの結界が張ってある場所にこの姿で顕現はできない、ということ》
あの時のように説明して、宿儺は肩を鳴らす。
宿儺の魂はいわば、呪霊と同義。だから宿儺の魂が表に出た状態であれば、たとえ虎杖くんの肉体を使役していようとも五条先生が張った『外部の呪力と呪霊を排除する結界』のふるいにかかってしまう。
《あの男の不在かつ、俺が顕現できる限られた空間で、皆実がそこに存在し、さらにその場所で小僧が眠りにつく。すべての条件が揃ったのが、今だ》
宿儺が私の身体をさらに引き寄せて、向かい合うように私を膝の上に乗せる。
こうして向かい合ってしまえば、嫌でも裏切りの記憶が私の中に蘇った。
「は、なして」
《断る。俺は今、オマエを求めているのだぞ? 意味は分かるな?》
分かりたくない。
でも、宿儺と縛りを結んだ魂は、私の身体を硬直させる。
「虎杖くん……」
今この状況を変えられるのは、やっぱりその人しかいない。
眠りが条件なら、虎杖くんを起こせばいいだけのこと。
「虎杖くん、起きて!」
《無駄だ。小僧は起きん》
私の行動を、宿儺は嘲笑う。
《小僧は一度寝たら満足のいくまで睡眠を貪る。何があっても起きることはない。……その代わり、いつ起きるかも分からぬから下手なこともできぬのだが。皆実を可愛がるくらいの時間は起きぬだろう》
宿儺の手が私の後頭部に滑って、私の髪をクシャリと握りしめる。