第21章 雨後
呪いの言葉が、私の身体を廻る。
(だから、嫌なんだよ)
五条先生にもう一度逢うために生き返って。
でも生き返った先で、私は五条先生を裏切るの?
《何を迷っている?》
呪いには、分からないよ。
分かってほしいとも、思わないよ。
《ちなみにオマエがこれを拒否すれば、小僧も生き返らせん》
虎杖くんを人質にして。
宿儺は私の決断を煽る。
《さあ、選べ》
私の選択が虎杖くんを生かしも殺しもする。
その一方で、私の選択が五条先生を簡単に裏切ることもできる。
『皆実』
目を閉じれば、簡単に思い出せるの。
逢えなくたって、私の中に五条先生はちゃんといるの。
でも……。
(五条先生……)
虎杖くんのせいには、しない。
私が選ばないと虎杖くんが死んじゃうから、なんて。
絶対に言っちゃいけない。
私の自分勝手な選択を、虎杖くんに押し付けちゃいけない。
(……ごめん、なさい)
どうあがいても。
どう言い訳をしても。
ただただ……私は、五条先生に逢いたくて。
何を引き換えにしても。
五条先生との未来が欲しくて。
その未来が地獄でも、かまわないよ。
『バカ皆実』
バカだよ。
バカだから。
もう一度、その声が聞きたいの。
後悔なんて……絶対にしない。
「……条件を、呑みます」
答えたら、涙が出た。
頬を伝って、落ちた涙が首筋を流れる血と混ざり合う。
《……それで良い。オマエは俺のものだ、皆実》
誓約の証を与えるように、宿儺の唇が私の唇に重なった。