第18章 夏の空の落とし物 後編 お相手:竈門炭治郎
みくりが目を覚ますと
部屋の中は真っ暗だった
身体を起こすとパサッと
何かが自分の顔から落ちて
それを拾い上げると
濡らした手ぬぐいだと分かった
瞼が重く腫れぼったい感じがして
その部分に手を当てると
結構 腫れてる感じがするから
隣で寝息を立てている
炭治郎君が濡らした手ぬぐいで
私の瞼を冷やしてくれてたのだろう
あれから
時間が経っているようで
日付は変わってしまっていた
自分の身体の中心の部分に
みくりが意識を集中させてみるが
彼と身体を重ねた後に残る
違和感にもある意味似たような
中が彼の大きさに押し広げられてる
感じが自分の身体の中心にはなくて
彼は彼女と 美空とは
事には及んでないのは
みくりには分かったが
それなのに なぜか
自分の中にあったはずの
美空の存在はもう どこにもなくて
もう彼女が ここには居ないだって
そう 気が付いてしまった
私が彼女と 美空と身体を共有した
時間なんてほんの短い時間だったのに
何か胸に穴でも空いてしまったような
そんな 喪失感にも似た 感覚があった
「みくりさん、目、覚めたんですか?
身体は大丈夫ですか?」
私の気配で目を覚ましたのか
それとも 私の匂いで
そんな感情を感じ取ったのか
炭治郎が眠たそうに眼を擦りながら
身体を布団から起こして
そう尋ねて来た
「ごめんね、炭治郎君。起こしちゃった?
ねぇ、美空は…、行っちゃったの?」
みくりのその言葉に
炭治郎がふっと淋しそうな
笑みを浮かべて
「俺なんかよりも、何倍も優しくて
素敵な人……見つけるからって。
言ってました。それでいて、美空の事、
好きで好きで仕方ないくらい
好きになってくれる人、次は探すって、
だから…もう」