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不治の中毒症状を/テニスの王子様

第1章 



「だーめ」

そう囁きながら、俺は片手で彼女の手を壁に押し当て、もう片方は腕ごと壁に密着させた。自然と美幸に覆い被さるような体勢になる。お互いの吐息が掛かりそうな距離。鼓動まで聞こえてきそうだ。俺の心臓が早鐘のように脈打ってること、悟られなければいいけど…。そんなことを考えていたら、美幸は恥ずかしそうに顔を背けてしまった。

あ…美幸の顔、もっと見たい――
そう思った時には、彼女の顎にそっと手を添え、椿のように綺麗に紅潮した顔をこちらに向き直していた。

「ほら、これでもう逃げられない」

ぐっと顔を近付け、そう耳元で囁く。
それにびくり、と敏感に反応する美幸が可愛くて仕方ない。

「俺のこと、独占したいんでしょ?思う存分、していいよ」

彼女の返事を待たずにその愛らしい口を覆う。暫く彼女の柔らかな唇の感触を愉しんでいると、口内にじんわりと甘く蕩けるような香りが広がった。彼女が付けているリップクリームだろうか。それとも――

「…まるで長太郎がプレゼントみたいだね」

そう言って彼女がくすりと笑う。

「俺は美幸が欲しいけど…?」
「っ…もう…!」

長太郎はさらっと恥ずかしいこと言うんだから、なんて美幸は呆れた口調で呟く。それでも、その表情は今日見た中で一番優し気で、何より愛らしかった。その後、間を置かずに今度は彼女の方から唇を重ねてくれる。

「誕生日おめでとう、長太郎。大好きだよ」

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