第1章
「そういえば…さ」
そう言い、俺は目の前の美幸をまじまじと凝視する。俺と彼女の身長差は20cm以上。彼女は自然と上目遣いで俺の顔を見据える。
身長が高いことに特別関心はないけれど、こういう時は役得だな…とつくづく思う。彼女の上目遣いは、俺だけの特権だ。
俺の影に隠れる小さな小さな彼女が可愛らしくて…つい、意地悪をしたくなる。
「まだ美幸から貰ってないんだけど…いつまで焦らすつもりなの?」
俺の言葉に明らかに狼狽える美幸。俺を見据えていた瞳が泳ぐ。
「い、今手元に無いから…その、も、もう教室戻ろ?」
そう言うと、美幸は俺の手を払い除けようと手を伸ばす。