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恋模様、快晴のち火の雨。

第2章 ある血族


「すっごい緊張したよ…」
「初見であの雰囲気の中2人はなぁ…」
淡白な廊下を歩く影が2つ。1つは私の物。もう1つは、私の相棒で連続放火による指名手配犯、葛西善二郎の物。
ンンッ、今日もかっこいい横顔…。惚れ死ぬ…。
「何か言われたかい?」
「ここを案内してもらえって。ついでに他の五本指にも挨拶を」
葛西さんが『新しい血族』なんていかにもヤバそうな集団の、五本指なるメンバーの1人だった。そんな事つい最近まで聞いたこともなかったけど、彼みたいに凄い人が他に4人もいるなんて純粋にワクワクした。そんな私の心情を見透かしたように葛西さんが口を開く。
「全員癖は強いが、面白い奴等だよ。ちょっと扱いが難しい奴もいるけど、海月は容量良いから多分大丈夫だろ」
あっ今褒められた?褒められたのか??葛西さんに???
これには私も当面弱い。ゆるゆると口角が上がってしまう。
「五本指にはそれぞれ控え室が与えられてる。とりあえずそこを回りながら…って、何て顔してんだお前……」
「へ?」
見ると口元を押さえて笑いを堪える葛西さんの姿が。正直後ろから見ると若干引きそうなくらい肩が震えている。
「…何よ」
「お前、ニヤけすぎてうらぎりくんみたいな顔になってたぞ」
いやニヤけ通り越してもうらぎりくんにはならねーだろ。なんてツッコミは心の中だけにしておく。それよりも、ニヤけ顔を見られたことの方が重大問題だった。仮に百歩譲ってあの感想を許すとしても、うらぎりくんなんて酷評付きのニヤけ顔だ。恥ずか死ぬわ。てか仮にも許さん。
「おい何してんだ置いてくぞ」
危うく顔を手で覆ってその場にしゃがみ込むところを、葛西さんの声で我に返った。いやあんたのせいじゃろがい。
「あっ馬鹿待ってよ!」
腹立つ。何か一生勝てる気がしなくて腹立つ。
私の胸をこんなに苦しく締め付けるのに、何の自覚も持っていないこの男に惚れた自分も馬鹿なのだ。でも、少しくらい私が得したって良いじゃない。もう大分前方を歩く葛西さんにローファーを鳴らして駆け寄り、その無造作にポケットへ突っ込まれた逞しい腕に私の腕を絡ませた。
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