• テキストサイズ

わたしは漁火

第8章 8



海岸線に、小さな洞穴を持つ崖があることを、地元の人間はみんな知っていた。
知っているけれど、特にどうということのないものなので、誰も気にかけてはいなかった。
だからその崖が突然崩れたと放送を聞いても、そうか驚いたなあで済ませられるはずだった。良正はそうだった。有羽にとってそうではない理由が、良正には分からなかった。

半狂乱になってまっすぐ駆けていく有羽に、不思議なことに良正はどうやっても追いつくことが出来なかった。
やがて有羽の姿は見えなくなった。良正は有羽の両親に訳を話して追いかけたけれど、どうしても有羽を見つけられなかった。警察も、何日もかけて探したけれど、駄目だった。崖も捜索されたけれども、崩れた岩が連なるばかりで、何も誰もいなかった。この事件はニュースにもなって、何度かは目撃情報が寄せられたのだけれど、どれも有羽ではなかった。

そうしてその後、彼女の行方を知っている者は誰も居ないのだとさ。


おしまい
/ 32ページ  
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:なごんだエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白い
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp