第30章 sprout2 佐久早
それから数日後、今日は臣くんが練習終わりに家に来る日
今日のディナーは何にしようかな…
12月になって急に冷え込む日が増えたし、シチューとかどうかな?んー、でも臣くんは和食の方が好きだし、麦味噌汁を具沢山にして、和定食にしようかな
私は臣くんのために献立を考える時間がとっても好きで、もし結婚したら、毎日臣くんに私の作ったご飯食べてもらえるなんてすごく幸せだけど…そんな日は来るのかなぁ…
そんなことを考えながら、キッチンで夕飯の準備をしていると、ガチャと鍵が開く音がした
「ごめん歩さん、遅くなった」
「ううん、全然。先シャワーする?」
「うん、そうする。外の菌を歩さんに付着させたくないから」
そう言うと臣くんは、私に指一本触れずに浴室に向かった
この前聞いた話によれば、宮さんは久しぶりに家に帰ってきた時には、玄関で押し倒してきたりするらしい
そんなこと…臣くんでは考えられないなぁ
臣くんがそんなことしてきたら、それはそれで驚きだけど…
どうしてもランチ会で2人に言われたことを考えてしまう
ちゃんと自分の気持ち伝えなきゃって思うけど、なんて言ったらいいかも分かんないし…
多分ご飯を食べてる最中も、そのことが常に頭にあったからか、様子がおかしかったのかもしれない
夕食後、ソファで並んで座っていると臣くんが
「歩さん、なんか元気ない?どうかした?」
と私の顔を覗きこんできた
「…え、そんなことないよ?」
「そう、あのさ、クリスマスの日空けといてね、ご飯予約したから」
「わざわざ予約してくれたの?嬉しい、ありがとう」
「歩さん、本当に嬉しい?」
「勿論だよ」
「そう?なんか…今日、本当元気ないから。それとも俺、なんかした?」
なんかしたと言うか…シテないと言うか…
「…いや、そんなこと」
「俺さ、口数も少ないし…多分伝わってないことも多いだろうから、思ってることあったらちゃんと言ってほしい」
「…言っていいの?でも…別に臣くんが悪いわけじゃないことなんだけど」
「全然、言って」