第22章 adultère2 赤葦
彼女の処女作 ハツコイ
バレーボール部のマネージャーである主人公が、想いを寄せるバレーボール部員の男子にレイプされるという話
好きな人に無理矢理犯される主人公は、そこに愛がないと知りつつも受け入れてしまう
それでもこれは私の初恋だという主人公の健気さ、実は相手の男子にも事情があって…その切ない魅力が若い女性の心を虜にし、ベストセラーとなった
ー数週間後
都内の某ホテルで、映画の制作発表パーティーが行われることになった
彼女は人前に立つことを嫌がってきたが、この映画の原作者として、参加せざるを得ない状況だったので、渋々了承したのだった
そして、今彼女は会場のスタイリストに衣装とメイクを準備してもらっている
俺は控え室の外の長椅子に腰掛け、彼女の支度を待っていた
「お待たせ〜」
彼女の声がして顔を上げる
!!
そこにいた彼女は細身の真紅のドレスを身に纏い、しっかりとメイクをして、少し照れくさそうにしていた
ッッ!!
直視できなくて思わず目を逸らす
執筆中の先生は…と言うと、大体髪は上に纏めてお団子にして、ゆるい部屋着でほぼすっぴんが定番だし、外に出る時もここまで着飾る事はない
真紅のドレスが白い肌に映え、共演者の女優も霞むほどの美しさ
誰にも渡したくない
俺の中にそんな感情が芽生えた
制作発表パーティーが始まると、登壇した橘先生のあまりの美しさに会場もどよめく
最初に質問した記者が
『いやぁ…出演者の女優の方かと思いました』
と開口一番言ったほどだった
それに関して異論はないが、彼女がこの小説に出てくるシーンを他の男と演じるなんて、考えただけでも嫉妬でおかしくなりそうだ
『次の質問です。今作や、また今作に限らず、先生の書く濡場はリアルで心情描写もとても細かいですが、実体験なのでしょうか?』
は?こんなセクハラまがいの質問…と思っていると、彼女はマイクを持って
「そうですね、全部が全部ではないですが、昔ある人に言われたんです。経験のない人が書く濡れ場は処女臭がするって…セックスってね、身近なテーマなんですよ。あなたもするでしょう?」
そう言って質問した記者に向かって、彼女は妖艶に微笑む