• テキストサイズ

Memories of Tomorrow

第1章 unlucky men


 Nside

 喉の奥に指を突っかける。

 吐く。

 また突っかける。

 吐く。

 しばらくその作業を繰り返した後、俺はようやく、顔を上げた。
 目にうっすら涙が溜まっているのが鏡を見ずとも分かる。トイレの便器に吐き戻された、ハンバーガーの残骸をこれ以上見ていたくなくて、『強』のボタンを押した。勢いよく水が流れた。

——この水みたいに、俺の悩みも、綺麗さっぱり無くなったらいいのにね。

 もしくは、俺自身か。

 誰もいないことを足音で確認すると、そっとドアを開ける。思わず小さなため息が漏れた。
 出来るだけここから遠ざかりたくて、さっさとトイレから出た。
 汚れた手は、嫌だったけれどズボンのポケットで拭いた。
 1秒でも早くここから立ち去りたかったから。
 鏡とすれ違いざまに見た自分の顔は、何故なのか良く分からないけれど、貧乏くさく痩せこけて、ひどく青白いように思えた。

 きっと照明のせい。
 そう思い込んだ。
/ 37ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp