第9章 交淡如水 【冨岡義勇】 1
担当9カ月目の主な出来事
義勇が任務中に怪我をした。右肩に大きな切り傷と、右足は折れていた。今回は自宅に戻らず、大人しく蝶屋敷で治療を受けた。
「冨岡さん、ちゃんとここで治療を受けるなんて成長しましたね。」
「前回は迷惑をかけたからな。」
義勇の発言に驚いて胡蝶は言葉に詰まった。
「・・・・素直で気味が悪いですね。」
ちゃんと安静にしてくださいね。と言い、胡蝶は病室から出た。
程なく病室にあやが来る。勢いよくドアを開けて義勇を見た。
「義勇殿!」
あやはどこから走って来たのか、かなり息が上がっている。病室にいた義勇はベッドに腰かけて、動く方の腕で木刀を振っていた。
「騒々しいな。・・・あや。何だその顔は?」
あやは泣きながら来たのだろう、鼻が赤く、目は腫れている。その顔を見て義勇は困惑している。
「・・いつもの顔です。・・義勇殿のお屋敷ではなく、ここにいらっしゃると聞いて大怪我かと思い・・・。」
「・・大怪我ですね。・・・義勇殿、安静と言われませんでしたか?」
傷が開きますよ。と、呆れたように言いながら義勇の前に行き、木刀を手から取る。
「・・・大したことは無いが、俺の家だとまたあやの仕事を増やしてしまうからここに来た。」
あやを見て、ちょいちょいと手招きし、近くに来たあやの顔に手を伸ばし溢れた涙を指で拭ってやる。
「・・・頭でも打ちました?」
「そうかもな。あや、泣くな。大丈夫だ。」
「こっちへ来い。」
義勇はそう言って隣に座らせる。
心配かけたか?と言いながら、怪我をしていない方の腕を回して自分の肩へあやの頭をのせる。あやの頭に自分の頭を横に倒してこつんと当てる。
「・・心配しました。」
あやの声が涙声だったので、義勇は体を離して覗き込む。
「あや、まだ泣いているのか?お前は子どもみたいだな。」
「義勇殿が子供扱いしているだけです。」
あやは少し拗ねたように言い、義勇を見る。