【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第3章 人でなし
“ 私は生まれてきてはいけなかった。
もう、全て終わりにしたいの ”
初めて出会った時、君は僕にそう言った。
10代の少女とは思えないほど
酷く、暗い目をしていた。
“ もういい。誰も傷つけたくない ”
その小さな背中に
君は何を背負っていたんだろう。
正義感があったって
それだけじゃ誰も救えやしない。
「…さん!安室さん!」
「…!あぁ、梓さん。どうされました?」
「どうされましたって…こっちのセリフですよ!
ホウキ持ったままぼーっとしてたので。
掃除終わったら上がってくださいね!
あ、それと安室さんに一つお願いが…」
「はい?」
梓の話によると、昨日のそよ香は体調が悪かったらしい。
メールや電話を何回かしたが、全く返事がないので
心配だから様子を見に行って欲しいとのことだった。
「これ、そよ香ちゃんに渡してくださいね」
ポアロから出る間際、
レトルトのおかゆやカットフルーツ、スポーツドリンクの入った
紙袋を梓から渡された。
「…分かりました」