【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第3章 人でなし
その一声で、歓喜に沸き立つ研究員たちが
ピタリと動きを止める。
「…!
このようなところは貴方様の来る場所では…」
所長が慌てて駆け寄る。
「良いんだよ。私が無理を言って入らせてもらったんだ。
…ところで?」
気品のある男の口からは想像出来ないほど
冷酷な声が響く。
「こちらを、ご覧ください…」
所長がニヤリと笑うと、
不気味に輝く金歯が唇の隙間からのぞく。
男は研究員からゴム手袋を受け取るとそっとはめた。
1歩、また1歩と顕微鏡に近づく。
覗き込んだその先には、
喉から手が出るほど待ち望んでいたモノがあった。
「おぉ…おぉ…!!
待っていたよ。私の愛するマデイラ…」
心酔した面持ちで言うと
男は研究所を後にした。