第4章 決意へのマーチ【秘匿死刑】
「す、すごい……これが、特級呪術師……」
「あぁ。それも――頂点だ」
目の前で繰り広げられるのは、五条の一方的な戦いだった。
指一本分の力しかないとはいえ、相手は"呪いの王"と呼ばれる両面宿儺だ。
「確か……両面宿儺って、腕が四本に顔が二つある、実在した人間――だったよね」
神妙な表情で呟くように尋ねてくる詞織に、伏黒は「あぁ」と頷いた。
虎杖が呑み込んだ指は、全部でニ十本ある。
それは、宿儺の腕が元々四本あったからだ。
呪術高専では、そのうち六本を保有していると聞いている。
「呪術全盛期の時代に、術師が総力を上げても勝てなくて、死後に呪物化した死体も消し去ることができなかった。そうだよね?」
「そうだ。あの指を取り込めば一瞬で強大な力を手に入れ、存在するだけで呪力を狙う呪霊を呼び寄せる……今回みたいにな」
けれど、両面宿儺の指は五条の力をもってしても破壊することができず、封印するしかない。
しかし、呪術師は常に人手不足で、封印が追いついていないのが現状だ。
「そう……そうだよね。指一本だって、わたしたちじゃきっと、息を吹きかけるみたいに消されちゃう。それなのに、五条先生は……」
どう見ても、五条は宿儺を圧倒していた。