第4章 決意へのマーチ【秘匿死刑】
「十秒経ったら戻っておいで」
「え、でも……」
「大丈夫。僕、"最強"だから」
虎杖の気遣いに、五条は不敵に口角を上げる。
最強――これは比喩でも誇張でもない、紛れもない事実だ。
呪術界において、五条 悟に勝てる者はいないし、肩を並べる者もいないだろう。
「恵、これ持ってて」
冷や汗を流す伏黒に、五条は紙袋を放った。
「これは?」
「仙台名物、喜久水庵の『喜久福』。超うまいよ」
答えを聞いて、伏黒は聞いた自分が間違っていたことを悟る。
この男は、生徒が死にかけているときに、悠長に手土産を買っていたのか。
「お土産?」
首を傾げる詞織に、五条は「違う違う」と釘を刺してくる。
「土産じゃない。僕が帰りの新幹線で食べるの」
もっと悪いわ!
そう怒鳴りつけてやろうとして、五条の背後から近づく人影に気づいた。
「後ろ!」
慌てて注意を促す。
宿儺と入れ替わった虎杖が、五条の後ろから襲いかかろうとしていたのだ。
先ほどと同じ文様を刻んだ虎杖――否、宿儺の腕が、五条目がけて振り下ろされる。
しかし、そこにはすでに誰もおらず、一歩ズレたところに五条はいた。
「生徒の前なんでね。カッコつけさせてもらうよ」
宿儺の腕を掴み、横っ面を殴り飛ばす。