第21章 唐突に現れたディソナンス【京都校交流会―団体戦―〜呪具】
「《心臓を狙った一突き――……素晴らしい反応です。術師というのは殊の外 情に厚いのですね。仲間が傷つくたびに隙が生じる》」
「メグ!」
聞き慣れた声に振り返れば、小さな影が目を見開いてこちらを見ていた。
「来るな、詞織!」
しかし、伏黒の制止を無視して、少女は駆け寄り、地面に膝をつく。
「メグ、これ……」
腹から伸びる芽に触れようとする詞織の手を払い、伏黒は叫んだ。
「逃げろ、今すぐ!」
「イヤ!」
その後ろで、玉犬が呪霊の背後から牙を剥く。
しかし、それが届く前に影へと溶けた。
「コンちゃん⁉︎」
バッと振り返った詞織が、すぐにこちらの容態を気遣うのを気配で感じた。
破壊されたわけではない。
玉犬を呼び出しておく呪力が切れ、術式が解けてしまったのだ。
「《もう呪術は使わない方がいい。アナタに打ち込んだ芽は呪力が大好物。術を使うほど、肉体(からだ)の奥深くへ根を伸ばす》」
「ご親切に! どうせ殺すつもりだろ」
「《説明した方が効くのが早いらしい》」
呪霊の言う通り、説明してから芽の勢いがよくなっていた。
おそらく、術式を開示したことによるものだろう。