第19章 それぞれの想いが奏でるカノン【京都姉妹校交流会―団体戦―】
「それにしても……虎杖くんがあまり映りませんね」
真希、伏黒、詞織、釘崎、パンダ、狗巻……それぞれの動きはモニター画面に満遍なく映っている。
京都校も全員映って……いや。一番顔が怖くて体格の大きかった、東堂という生徒があまり画面に映っていない。
「動物は気まぐれだからね。視覚を共有するのは疲れるし」
「えぇ、本当かなぁ? ぶっちゃけ、冥さんってどっち側?」
からかうような口調だが、そこには確かに剣呑な響きを含んでいる。
どっち側とはいったい何を指しているのか分からないが、これは関わらない方がいい話題だろう。
「どっち? 私は金の味方だよ。金に換えられないモノに価値はないからね。なにせ、金に換えられないんだから」
つまり、金以外に価値はないと。
ここまで言い切ると、いっそ清々しいな。
すると、五条は「いくら積んだんだか」と、なぜか京都校の学長へちらりと視線をやる。
楽巌寺は何か悪巧みでもしているのだろうか。
頭が固くて陰険そうなおじいちゃんに見えるし。
首を傾げる歌姫を見るに、引率教師には知らせていないようだ。
楽巌寺は弁解もなにもせず、終始 黙っている。
そこへ、唐突に壁いっぱいに貼られた呪符の一つが赤い炎に包まれて消えた。画面を見ると、パンダが呪霊を祓ったところだ。
「おっ、動いたね」
楽しそうに言う五条に、順平も思わず身を乗り出す。
確か、エリア内に放たれた呪霊には呪符が張りつけられ、呪霊消失と同時に、対になっている観覧席の呪符も消滅するようになっていたはずだ。
事前に記録した呪力によって反応が異なり、東京校が祓った場合は赤、京都校が祓った場合は青色に燃える。
そういえば、記録外の消滅反応は東京校側の赤色に燃えると言っていたはず。
聞いたときはそこまで疑問に思わなかったが、それは真希がいるからなのだろう。