• テキストサイズ

夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】

第9章 グラン・ギニョールの演目【呪胎戴天】


 けれど、違う。それは過信だった。

 自分はこんなにも弱い。無力だ。

 宿儺が領域展開を繰り広げる。【伏魔(ふくま)御廚子(みづし)】という名の、宿儺の生得領域。
 牛の頭蓋骨を積み上げた、おぞましい伏魔殿だ。

 宿儺の領域展開の効果なのか。涙を堪える詩音の目の前で、宿儺が呪霊を縦に刻む。
 まるで、プロの料理人が肉や魚を捌くような鮮やかさ。

 そして、ついでとばかりに、胸を貫いた。引き抜いた彼の手には、ミイラ化した人間の指が握られている。
 両面宿儺の指だ。強力な呪力のブースターとも言える特級呪物を持っていたとは。

『……フン、他愛ない。この程度で俺と同じ特級という括りか。笑わせてくれる……なぁ?』

 跡形もなく消し飛んだ呪霊を見下ろして呟いたかと思えば、宿儺はグルリとこちらを振り返った。

『あぁ、お前も特級だったか。虫ケラ相手にいいようにされるとは……特級という括りも、存外いい加減だな』

 ククッと喉を震わせる宿儺に、詩音は言い返すことができず、ただ唇を引き結んで俯く。
 足音が近づいてきた。宿儺がこちらへ来ているようだ。

 詩音は身構え、頭の中で様々な詠唱を反芻した。


『こ……【この言葉は兇悪を挫き、罪過を祓う――急々如律――……】』

『"黙れ"』


 ビクッと言葉を噤む。そんな詩音を、宿儺は嘲笑うように見下ろした。
/ 381ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp