第9章 グラン・ギニョールの演目【呪胎戴天】
『う……かはっ……』
込み上げる血を吐き出す。
あぁ、また詞織の身体を傷つけてしまった……と、無力な自分を呪う。
せっかく、詞織を守るために呪いになったのに……詞織を守ることのできない自分なんて、なんの価値があるというのだろうか。
ギュッと拳を握って、地面に叩きつける。
そんな詩音を見て、呪霊は愉快だと言わんばかりに口角を上げてはしゃいでいた。
腹が立つ。
許せない。
"絶対"に祓ってやる。
けれど、身体が動かない。
『【オン・コロコロ・センダリ・マト……】』
ガンッと、再び呪力の塊が投げつけられ、詩音の肢体は壁に強く叩きつけられた。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。
もはや、詩音の頭を埋め尽くしているのは、憎悪よりも焦燥の方が強かった。
このままでは、詞織を死なせてしまう。
『詞織……お願い、目を……覚まして……あたし、このままじゃ……』
あなたを守れない……。
――誰か……! 誰か、詞織を助けて……‼︎
懇願にも近い想いで、詩音は祈った。
神など信じたことなどない。詞織以外の人間を頼ったことはない。それでも、願わずにはいられなかった。
今、この危機的状況を打開できる奇跡を……。
そして――その奇跡は現れた。
* * *