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わたしは、この日のために【鬼滅の刃】

第15章 無限列車の後


ざああああ

風の音がする
これは夢だ
直感でそう感じた

わたしはまた夢を見ている

また、わたしは花畑にいる
今度は紫色の花に囲まれている
わたしはしゃがみ込んで、その花を見た

『これは…アネモネ?』

そう、確かアネモネだ
かわいらしい花

ざざざざあああ

強く風が吹き、わたしは顔にかかる髪の毛を払った
そして、目を疑った

また、あの人が立っている

わたしを慈しむような顔をして、炎の柄の羽織を羽ばたかせている

「愛」
大好きなあの人の柔らかい声がした

また、都合の良い夢だ
夢だとわかっているのに、わたしは走り出した

一目散にその胸へと飛び込む

『杏寿郎様!』

温かなぬくもりを感じた瞬間、杏寿郎様はふわりと花のように消えてしまった

『…夢でくらい、側にいてくれてもいいのに…』

熱い涙が頬を伝った




ハッと愛が目を覚ます。
そこは見慣れた蝶屋敷の天井。

『ははっ…何で…』
寝ながら涙を流していたようで、それを静かに拭った。

『紫のアネモネの花言葉は…貴方を信じて待つ』

『…夢の中でさえ、何もできない』

杏寿郎が目を覚まさなくなって2週間が経っていた。
峠はこえ、後は目覚めるのを待つのみとなった。

そのころから少しの見舞いはできるようになって、愛は誰も来ない朝早い時間に、顔を見にいくのが日課となっていた。

愛の傷もだいぶ良くなり、杖をつきながら歩くことができるようになった。
腕の火傷もだいぶ良くなった。

『おはようございます。杏寿郎様、今日も来ましたよ』

夢の中での出来事を思い出しつつ、ベッドで眠る杏寿郎の顔を見た。

『杏寿郎様、腕の火傷よくなりましたよ。跡は残りそうですが、ほら、見てください。何だかこの跡、炎の形をしていると思いませんか?杏寿郎様が刀を振るったときに出てくる炎のようですよ…』

杏寿郎からの返事はない。

『…また、来ますね。…杏寿郎様、好きですよ』

愛は力なくはふっと笑うと、くるりと背を向け、歩き出した。

部屋を後にしようと思ったそのとき、違和感を感じた。
そうかすかな違和感、けれども確かなものだった。

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