• テキストサイズ

花火 ー呪術廻戦ー

第4章 一ヶ月後


「なりました…」


人混みに揉まれ、その波に逆らうことなく流されながら、昨日五条に言われた言葉を思い出して、なまえは重たい息を吐き出した。
自分以外のクラスメイトを乗せて、上階へ運ばれていっただろう、エレベーターの扉もいつの間にか人が多くて見えなくなっている。

先程まで楽しみで仕方なかった東京タワーの上へ。
今は行きたいと思える気分じゃなかった。
上には、クラスメイト以外の 知り合い がいるから。


またため息を吐きそうになって、あわててそれを飲み込む。
ため息を吐くと幸せが逃げるというからだ。
しかしー…


壁際まで来て、ようやく背を壁に任せて一息つく。
この後の展開を考えると、やはりため息を吐きたくなる。

パターン①はこうだ。
誰も探しにこない。
恐らくメンバーの性格的にこれが最も有力ではないだろうか。
そもそも普通に考えれば、次のエレベーターで必ずなまえが上ってくると思い、焦ることもなく各々楽しむだろう。

パターン②
迷子の放送がかかる。
これは、五条悟が最悪に悪ノリした時に起こるイベントだ。
服の特徴などをより具体的に放送させて、なまえを恥の底へ追い込むだろう。

そして、パターン③
これは、一番可能性として低いが、


「タワーの上と下の区別も付かなくなったわけ?」


誰かが、なまえを迎えにくるパターン。


嫌味な声色に、ハッと顔をあげる。
これは、本当に驚いた。
パターン③の中でも、一番、あり得ないと思っていた人物。


「おーい、聞こえてますかー?」


人差し指で、トンとおでこをつつかれ、我にかえる。
あ、うん…と返せば、何驚いてんだよと五条は不服そうに、なまえの隣にきて、同じように背を壁に預けた。

突然のことに、言葉が見つからないなまえ。
どうしたんだろう、と思ったが、いや私を探しにきたんだと思い出す。
でもなんで一緒に壁にもたれかかっているんだろうか。
色んな考えが頭をめぐって、とりあえずはぐれてしまったことを謝らなければと口を開こうとして


「なんでエレベーターおりた?」
/ 218ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp