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花火 ー呪術廻戦ー

第14章 高専


だが、話し振りから、彼はこの件については曲げないだろうことを感じたなまえは、これ以上どうすることもできず。

「でもー…」

そもそも、本当に携帯を買うかどうかも、正直迷っていた。
もちろんそれは、現時点で支払い能力がほとんどないこともあるし。それに。


勿体無いかも、と。でかかった言葉を、飲み込んだ。自分で、言いかけて。その、言いかけた言葉に、驚いた。


勿体無いかも、もし、私が元の時間に戻れたら、と。


自然と、でかかった言葉。
思わず、口に手を当てて。

(え…、私、戻れると思ってるの…?)

戻れる訳がない。
それは、この事態が自分の術式によるものだと、思っていたからだ。『逢魔時』で戻した時間は、二度と戻らない。

だけど、そもそも11年後の自分は死んでいて、こうなったのは、自分の術式によるものではない可能性が出てきた。

それにより、彼女は、自分でも気付かないぐらい、頭の端っこで。もしかしたら、学生時代のあの時に、戻れるかもしれないと。期待を、していたのだ。
それに気付いて、ドキリと心臓が打つのが分かった。

(バカだ私、そんな訳ないじゃん…そんな訳…)

期待をして、裏切られれば、その時のショックは計り知れない。目をギュッと閉じて首を振る。自分に言い聞かせるように、強く強く。

しかし、一度意識してしまったそれは、なまえの頭に焼き付いて。




ふと現実にかえってきたとき、いつの間にか店の外に立っていたなまえの手には、最新機種のスマホと呼ばれているものが握られていた。薄いピンクのそれは、以前持っていた携帯よりも高級感があるように見える。

スマホと五条を交互に見て、慌てたようになまえは口を開いた。

「あ、ありがとう、悟」

「ん。僕と硝子の番号登録しといたから。帰ったら硝子に連絡してみれば?」

「…うん。してみる」

携帯を握りしめてそれをしげしげと眺めるなまえを、五条は彼女に気付かれない程度に見つめる。
そして、懐かしい彼女の歩幅に合わせて歩きながら、前を向いた。

「なまえさ、硝子に緊張してんの?」

さらりと。紡がれたそれは、天気を聞くみたいに軽い調子で。だからこそなまえはその意味が分からず、「え?」と間の抜けた疑問符で返した。

黒い目隠しが、なまえを見る。
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