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花火 ー呪術廻戦ー

第14章 高専


柔らかい日差しを、瞼の上から感じる。
目の端が、ピクリと震えて。眠りと目覚めの境界線に、微睡む意識がゆるやかに覚醒を始める。

(いい匂い…)

その香を、なまえは知っていた。ふわふわするのに、胸がむず痒くなって、照れ臭くなる、そんな匂い。最近はめっきり減ってしまったが、その匂いを嗅ぐ機会は、今までも多くあった。

(悟の部屋で寝ちゃった…?)

昨日は何をしていただろうか。またゲームをしてそのまま彼の部屋で寝落ちしてしまったのか。
動き始めた思考に、瞼がゆっくりと押し上げられ。
次の瞬間、がばりと効果音が付くのでは思うほどに勢いよく、なまえは上半身を起こした。

飾り気はないのに、清潔感と上品さがただよう部屋の一室は、明らかに勝手知ったる高専の寮ではなかった。そこに置かれた、横にも縦にも大きなベッドは、本来そこで寝るべきであった人物を考えれば、納得の大きさだ。
だが、今そこに寝ていたのは、平均より少々小柄である、みょうじなまえ、1人だけ。

覚醒と同時に、彼女の頭には昨日までの様々な情報が蘇ってくる。仲間の呪詛師落ち、もっと強くなりたいと、受けた任務。11年後の未来。大人になった五条悟に、過去に死んでいる自分。
多すぎるその情報も、一度睡眠を挟んでいるからか、穏やかにそれは彼女の体に馴染んだ。

(悟の部屋…じゃなくて、悟の家、だ)

そうしてようやく、五条悟のマンションに泊めさせてもらったことを思い出した。
あれから、携帯も財布も無くして、一文なしの状態であったなまえの為に、とりあえずはと近くのコンビニで洗面道具から下着等、泊まりのために必要な物を揃えてくれた五条。恐縮しまくる彼女の最後の試練は、寝る場所であった。

もちろん彼女は、五条のベッドを占領する気は毛頭なかった。友人や同僚が泊まりにきた用に、布団が一式あると聞いていたから、当然にそこで寝るのだと思ったし、なんならソファーでも全然構わなかった。
だが、なまえにとっては意外なことに、普段から唯我独尊と適当を地でいく彼が、なんやかんやでそこは譲らなかった。押しの弱い彼女は、大した抵抗もできずに白旗を上げ、普段の五条の寝室でなまえが、別室で五条が寝ることになった。

(でも悟には悪いけどこのベッドめちゃくちゃ寝心地よかった)

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