第13章 再会

五条なりに、その問いは気を遣っていた。
彼女があの廃ビルにいた経緯が分かれば、彼女が今ここに生きているヒントが得られるかもしれない。
「ああ」と、なまえは特に隠すでもなく、少し困った様子で口を開く。

「それは私も分からない…っていうか、覚えてない…。○○区の廃屋で任務をしてたはずなんだけど…」

その言葉に、五条は反応する。
彼女が口にした任務を、彼も知っていた。忘れようにも絶対に忘れられない。それは、彼女が死んだ、あの時の任務なのだから。

「…それって、3年の時の？」

確かめるために聞き返せば、彼女は頷く。

「そうだよ。って、今も3年、」

なまえの言葉が途中で止まる。
その顔を見て、五条は、彼女が気付いてしまったことを悟った。


「3年…だよね…？」


硬さの混じる声が、五条へと縋り付く。
言えば、彼女が傷つくだろうことは容易に想像がついたから、答えを躊躇いそうになる。
あの頃。多く傷ついてきた彼女だから。もう傷ついてほしくはなかった。

「…〝なまえは〟3年の時のままだよ。何も変わってない」

あの日の姿のまま、彼女の顔色が更に悪くなる。
気付かなければよかったのに。余計なことを言わなければよかった。自分の元へ戻ってきてくれた彼女を、何も知らせないまま、分からないまま、ただ大切にできたらどれだけ良かっただろうか。

だが、知ってしまった彼女は、その強い視線で、先を促す。真実を。
五条は、諦めを混じらせて、小さく息を吐いた。


「なまえが話した、その３年の時の任務から…今はもう、１１年、経ってる」

「じゅう…いち、ねん？」


呆然と呟くなまえを、五条はただ静かに見ていた。今度はきっと。何一つ、見落とすことのないように。