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花火 ー呪術廻戦ー

第10章 変化


あまりにも突然だった。

正直なところ、なまえ自身も何が起きているのか完璧に把握しているとは言い難い。
それは、五条と夏油が任務へ行って2日後、彼らが帰ってくるだろうその日に起こった。授業が終わり、なまえと硝子が教室で話していると、眉間に皺を寄せた夜蛾が教室へと飛び込んできて、「緊急事態だ」と告げた。

緊張事態と聞き返す間もなく、なまえと硝子はとにかく走った。途中告げられる断片的な情報から、星漿体護衛の任務が失敗したのだということを理解した。

「(悟と夏油が…失敗?)」

理解したはずなのに、それを飲み込みきれなかった。あの2人が組んで、任務失敗などと、そんなことがあると思わなかったのだ。
そもそも、失敗とは、どういう意味なのだろうか。

高専周囲には、溢れ出る蠅頭。大したことのないそれらも、数が集まると話が違ってくる。何が起きているのか分からないまま、終わりの見えないそれらを祓っていく。

「硝子、なまえ!ここは私達に任せて、お前達は筵山へ向かえ!」

夜蛾の普段とは違う緊張感。周りの空気。それらに気付いて、なまえの呼吸は知らずと早くなった。頷いて、硝子と共に走り出す。

走っているから苦しいのだろうか。
心臓のある辺りの服を、ギュッと握りしめる。大丈夫、大丈夫だ。自分に言い聞かせて。




呪術高専の筵山麓に到着した時、なまえの喉はヒュッといやな音をたてた。隣に立つ硝子も、思わずといったように足を止める。


破壊された鳥居、円形に大きく抉れた地面が、そこでの激しい戦闘があったことを伝えてくる。何より、こびりついた残穢と、おびただしい、血液。
これは、誰の血だろうと、なまえの喉が鳴った。

頭によぎりそうになる最悪の事態。それを、頭を振って振り払う。
あの2人は最強なのだ。彼らに限って、そんなことある訳がない。
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